atelier*

「 秋のはじまり 」

- Sep 6, 2020

たぷたぷ海を眺めていたら、水面のゆらめき瞳に棲んで、目玉の後ろで、大きなダムとなりました。高い声の虫たちが震えながら鳴くものなので、ダムの扉も合わせて身体を震わせています。海のずっと先で台風が生まれました。ここにも少し影響して、今日は雨が降ったり、止んだり、ぴかっと晴れて、夕日がいつまでも斜めにさしていたり、と思えば雷が鳴ったり、あっちこっちな天気だったのです。高い声の虫たちが、夜になったことを、みんなして教えてくれます。夏の蝉が、今日最後の声を出しました。昼に鳴き切れなかった声を、夜にこぼしました。

夜だ、夜だ、人がいなければ、灯りは無い。本当は真っ暗の夜だ、夜だ。台風があたたかい空気をエネルギーにして、このあたりのあたたかい空気も吸い取ってしまったから、ぽっかり空いた隙間に、涼しい風がそよそよと流れ込んできました。ダムは今日いちにちの景色を取り込んで、どんどん満ちてゆきます。満ちて満ちて、表面張力の線が、ぷっ、と力を緩めました。そうしたら、あれよあれよと水は流れてゆくのです。真っ暗な夜に、人が灯してくれた電気がありました。昼間の海は、人の灯りで蛍光の波模様を作っていました。揺れいてるのが分かります。ダムの中の水も、同じように揺れていました。溢れた水は、雨上がりの地面と一緒になって、潤んでいました。これはどうやら、季節が変わっていくのです。どうりで変な気分でした。秋がやってきているのでした。秋の匂いを嗅ごうと、鼻をすんすんとしてみたら、鼻の奥の方で、少し染みるような痛みと、海水を飲み込んでしまった時の味がしました。わたしは泣いていました。悲しいことがあったわけでは全くないのに、ただ、秋に近づいたことに、身体がびっくりしていたのです。

今日は強がるのをやめました。大丈夫、という口癖も、今日は通用しないようなので、大丈夫じゃないと言ってみました。身体がほっとしました。ちょっとジャンクなものを食べました。身体はクスっと笑って許してくれました。今日も生きていた証拠に、いい感じにくったり疲れているのにも安心しました。こういう時は風邪に注意です。明日は、しょうがとにんにくをたっぷり刻んだ鍋に、ねぎやほうれん草やきのこなど煮込んで食べてみよう。高知のお山のてっぺんで教えてもらった「風邪ばいばい鍋」。今夜はこれからお湯をはって、身体を温めながら映画を1本観て、眠ろう。季節が変わるってすごいです。