atelier*

「 °.◯。海のコンサートホール 」

- Jun 23, 2021

まだ
海の中のよう

呼吸があたらしく 難しいので
たいへんにゆっくりと過ごしていたら
もうまる二日、経っていました

きっと忘れてしまう
絶対忘れないと思っていても
日々の新しさに逆らうことはできなくて
記憶という引き出しに順番に収まってしまう
その前に。
書き残しておきます

夏至のこと

コンサート中に見ていた断片的な映像、

間もなく満ちてくる大潮の珊瑚浜
波打ち際の泡の淵で、シャリリと、珊瑚たちの場所が入れ替わる
紗幕の中はタツノオトシゴのお腹の中のようで
これからぴゅうぴゅうと飛び出していく、その少し前の静けさの中
足踏みオルガンに墨色の爪先を添える
ヘアメイクの瑠美さんが直前にぽつぽつとくっつけてくれた
腕の光がキラっとする、ああまもなく
広大なもちきび畑のちいさな粒の集合体が
一斉に風を受けて歌い出す、その中にしゃがみ、
もちきびの黄金越しに点滅する波照間の夕日、
地平線に弧を描いて飛ぶハナゴンドウの群れ
あたりに照り返す陽射しの眩しさに瞬きすれば
蛍光色のちりが世界に散布される。

ふとギタレレに視線を落とすと
千広さんが集めてくださった流木と一緒にステージにやってきたのであろう、小さな蟻が弦をわたっている、
ごめんね、演奏しているから楽器の振動でびっくりしているよね
汗の絵文字が飛び出しているみたいに、わたわたと歩き回っている。
キミちゃんが拵えてくれたお衣装の、お臍のあたりに降り立ち
腕にのぼって、しばらくしてRefaceCPの鍵盤の上に辿り着いた。
その間わたしは息を歌に戻し、指は音楽のものになっていた。
どこかの海辺からやってきた蟻を眺めているうちに、
数曲が過ぎ、ハッとする。
久しぶりにホールで聴く拍手の群れは本当に波音に似ていた。
そうか、人がいるんだ、人の集まった優しい音
こんなにあたたかい、心地よい人の作り出す波音。
ohayashiが終わったのであろう、真っ暗になり、
点灯した、木舟の灯りのような高田さんの信号、
「だれか ここに いますか」
自動的に歌い出す。アダンの島の誕生祭。
誰が誰なのかもはやわからなかった。
イワシの群れや、深海に降るマリンスノーや、
星が生まれて、初めて目覚めた、海のプランクトンのように
驚いて、驚くたびに発光した。
わたしはここ、ここにいますと。

 

なんと心強い10人の音楽の塊だったのでしょう。
演奏者の皆さんに、心から、ありがとう。
そしてステージ上には見えていない、
たくさんのメンバーがいます。

ここにもまだ書かれきれていない、
たくさんの人たちが、
「アダンの風」に関わり、この日を創り上げてくださいました。

そして見守ってくださったお客さまへ
私たちに音楽の場を与えてくださって
本当に
ありがとうございます。

まだぼんやりしている中ちゃんとお礼ができているかどうかわかりませんが、、お許しください。

 

1日という単位はとうに透明になり
本来は数週間と呼ばれる時間に、ゆるやかなグラデーションを描きながら
大変に長い1日が、ようやく閉じつつある、そんな気持ちです。

2021. 6.23
青葉市子